鈴木安蔵と通じてゐたマッカーサーのアドバイザー、ハーバート・ノーマンとは ~5/3屈辱の日に~

 今日は、5月3日、屈辱の日である。私は、このブログでも、「占領典憲無効宣言、大日本帝國憲法復元改正、明治皇室典範奉還」を訴へてゐる。しかし我が國では占領憲法を憲法典と偽り、正統な憲法典か、の國體に基づいた検証をロクにせず、護憲改憲と尚も争ってゐる。今日は記念日ではない。屈辱の日だ。
 さてその、占領憲法護憲派や九条の会が、鈴木安蔵の映画「日本の青空」たるものを作り、「日本国憲法はアメリカが作ったものではない。民主的な日本人の総意が反映してゐる。押し付けではない。」と宣伝をした。しかし鈴木安蔵とは、福本イズム(福本和夫は、日本共産党の指導者の1人)の影響を強く受け、「二段階革命」路線をとった共産主義者である。鈴木は、戦後の直後、高野岩三郎の提起によって憲法研究会を発足させた。憲法研究会は昭和20年12月26日に政府の改正草案より1ヶ月も早く憲法草案要綱を発表したのである。これを占領憲法護憲派が、「日本人が自発的に日本人の総意を反映してゐる民主的な憲法草案をマッカーサーに突きつけた」と宣伝した。しかしマッカーサーのアドバイザーだったノーマンと鈴木は、昭和15年に知り合ってゐる。鈴木とノーマンは通じてゐたのである。
 今回も、前回の続きを、所詮は拙文に過ぎぬが綴るとする。占領憲法に大きな影響を与へた憲法研究会の中心人物である鈴木安蔵と通じてゐたハーバート・ノーマンについて、少しばかりこのブログでも記録しておかう。
 ハーバート・ノーマンは日本で生まれたカナダ人である。このノーマンを、マッカーサーは、最も信頼してゐたアドバイザーの1人としてゐた。昭和20年9月、昭和天皇とマッカーサーの直接の通訳を務めた人物である。カナダ外務省には、ノーマンの「GHQ司令官とそのスタッフへの助言」は、「最も貴重なもの」であったとする総司令部からの文書が残ってゐるらしい。労働組合の合法化、民主教育、農地改革などの重要な政策にはノーマンの影響が見られる、と指摘されてゐる。ノーマンの主著『日本における近代国家の成立』は、総司令部の多くの幹部の日本理解において「バイブル」以上の権威を持ってゐたとされる。彼は、封建主義を崩壊させる第一のブルジョア民主革命を意図したのである。(馬場伸也「占領とノーマン」『思想』昭和52年4月号)。
ノーマンは、昭和15年5月にカナダの駐日公使館の語学官として来日した時に、マルクス主義者の羽仁五郎著『明治維新』を読み、開戦ののち交換船で帰国するが、反対にアメリカから帰国する都留重人と出会ふ。その後、OSSに所属するやうになり、対日戦争の情報分析に従事し、戦後、来日してマッカーサーの下で対敵諜報部に所属し、政治犯や戦争犯罪者に関する任務についた。徳田球一や志賀義雄といった共産党幹部を釈放したのも、彼の尽力によるものであった。彼は総司令部において鈴木安蔵に会ってゐる。
昭和21年2月3日、マッカーサーはGHQの民政局長ホイットニーを呼び出し、憲法草案の作成を命じた。ケーディス大佐、ハッセー中佐、ラウエル中佐らが集まったが、そこには憲法の専門家はゐなかったし、1週間といふ短い期間しか与へられなかった。ホイットニー民政局長にしても、大学時代に法律を学んだが、フィリピンの戦争まで財政の弁護士をやってゐた人物であったに過ぎない。しかしその思想はルーズベルトのニューディール政策を支持する民主党左派の「隠れ社会主義者」といってよく、後に反共主義者のウィロビーと対立してゐる。民政局次長ケーディス大佐もまた弁護士であった人物で、やはり左翼のニューディーラーでありウィロビーと対立してをり、憲法に左翼的路線を導入させる事では一致してゐた。
その中のラウエル中佐は注目すべき人物であった。憲法研究会の鈴木安蔵を知ってゐたし、日本の事も研究してゐた。スタンフォード大学やハーバード大学卒業後、カリフォルニアで弁護士をやってゐたが、シカゴ大学で日本の政治制度の研究をしてゐた。
この人物こそ、鈴木安蔵の憲法研究会を英訳させて回読させ、GHQの憲法草案に取り入れたのであった。鈴木安蔵が共産主義者であり、ノーマンも共産党員であった。ラウエル中佐は、『私的グループによる憲法改正草案(憲法研究会案)に対する所見』(1946年1月11日)なる文書をまとめてゐる。

※参考文献
  • 「田中英道著 戦後日本を狂はせたOSS「日本計画」―二段階革命理論と憲法」
  • 「小山常実著 日本国憲法無効論」
  • 田中英道著 戦後日本を狂はせたOSS「日本計画」―二段階革命理論と憲法
  • 小山常実著 日本国憲法無効論

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