東條英機大将の弁護人を務めた清瀬一郎氏の陳述 ~不法と欺瞞だらけの東京裁判~ 皇紀2683年

 「日本国憲法失効論」の著者である菅原裕氏は、実際に東京裁判で元陸軍大将荒木貞夫氏の弁護人を務めた。
 この裁判に臨んだ日本の弁護人達は、次第に露呈してきた不法と欺瞞だらけの東京裁判に切歯扼腕したが、占領下の言論統制や公職追放等の圧政下に悶々と過ごした。昭和廿七年の独立回復を機に、いち早く菅原裕弁護士によって上梓されようとしたのが、今記事の参考文献たる「東京裁判の正体」であった。
 冒頭に東條英機大将の弁護人を務めた清瀬一郎氏の序言を戴き、まさに東京裁判の不法と欺瞞を強く指弾するものである。しかし、友人であった吉川英治氏の時期尚早なりとの勧告により、世上に公にされたのは昭和三十六年秋のことであった。

 清瀬一郎氏が、昭和廿一(耶蘇教暦1946)年五月十三日、本裁判中での論争にて、静かに申し上げた陳述の一部を以下に引用する。

 本裁判の基礎たる憲章の第二項には “The order was promulgated in accordance with the terms of surrender” すなわちサレンダーの条件として宣告した。それゆゑにこの憲章をつくった最高司令官も “Stern justice shall be meted out” といふ規則はサレンダーの一つのタームと思ってゐる。タームを付けたサレンダーは無条件の降伏ではない、またポツダム宣言第五項には Following are our terms といふ文字がある。キーナン、カー両検事の御引用のポツダム宣言第十三項は、日本政府がオール・ジャパニーズ・フォーセスに向かってアイコンディショナル・サレンダーを宣言せよといふのである。
 九月二日の降伏文書第二項も、またポツダム宣言を受けたもので、やはり軍隊参謀本部の無条件降伏をいってゐて、日本政府の無条件降伏、日本国民の無条件降伏をいってゐるものではない。降伏文書第五項には最高司令官の宣言、命令に服すると書いてあるが、それは最高司令官がポツダム宣言から授権された合法の命令に従ふといふ事であって、最高司令官の一顰一笑、何も彼に委すといふ事ではない。
 同第六項に、日本の天皇も、日本の政府もポツダム宣言の条項を誠実に履行すること並びに右宣言を実施する為には司令官に従ふ意味が書いてあるが、それはこの条項にある通りこのディレクションの項を全うする為に従ふといふのであって、ポツダム宣言以外の事に服従するといふ事は降伏文書にはない。
極東国際軍事裁判条例の五条A及びC、すなわち平和に関する犯罪、人道に対する犯罪はポツダム宣言以外のもので、マッカーサー元帥が持ってゐない権限で発布されたとするならば、日本国民はこれに従ふ義務はない。
 キーナン検事は耶蘇教暦1943年11月1日に、ルーズベルト大統領、チャーチル首相、スターリン首相がモスクワにおいて発せられた宣言に言及したが、この宣言はドイツがした残虐行為を処罰する為になされたもので、我が国には豪も関係ないものである。1942年及び43年のスターリン元帥の演説もまた然りである。ルーズベルト大統領の演説には、戦争犯罪を処罰することは言及されてゐるが、戦争が侵略戦争であらうがあるまいが、これを新たに計画し準備することを罰するまではいってゐない。
 カイロ宣言には日本を無条件に降伏させようといふ条項はある。しかしこれは戦争指導中の一つの方針で、我が国に本土上陸をしないで局を結ぶ為にはその無条件降伏はやめて、軍隊だけの無条件降伏にしてこれを緩和したのがポツダム宣言である。
 両検事とも1919年のベルサイユ条約を援用されたが、これが間違ひである。同条約はカイゼルのオッフェンスを処罰するといふことを書いて、それをドイツが承諾して著名したのである。もしポツダム宣言に日本の戦争を計画したものを処罰するといふことが書いてあったら、ベルサイユ条約と同じことになるが、ポツダム宣言にはベルサイユ条約第227条に相当する条項はない。しかもベルサイユ条約にはクライムスといふ文字を避けてオッフェンスといふ文字に緩和してあるが、これには一つの理由がある。当時アメリカを代表して犯罪人処罰委員会に臨んでゐたランシング、スコットの両氏が、条約に違反したこと、国際道徳に違反したことをクライムスと称することは反対だと主張して、遂にこの規定になったのである。我が日本もまたその意見には当時同意した。結局カイゼルはオランダの身柄引き渡し不同意で裁判にはかからなかったが、たとひ裁判になってもクリミナルとは称さなかったのである。ゆゑにベルサイユ条約第227条の引用は我々弁護人の方に利益になるのである。

 清瀬氏の当時の弁論での要点は、大きく分けて三点であった。

  • 第一点: 本裁判所は平和に対する罪ないし人道に対する罪につき裁判する権限はない
  • 第二点: 大東亜戦争以外の戦争や事変に管轄権はない
  • 第三点: 大東亜戦争の交戦国以外の国に関する事項に管轄権はない
※参考文献
  • 「菅原裕著 東京裁判の正体」
  • 菅原裕著 東京裁判の正体

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