トヨタ自動車やソニーグループなど日本の主要企業8社が出資し、先端半導体の国産化に向けた新会社が設立された。会社の名前はラテン語で「速い」といふ意味の「Rapidus(ラピダス)」。政府も研究開発拠点の整備費用などに700億円を補助する予定だ。官民あげた新会社の設立である。
※参照
巻き返しなるか日本の半導体産業
「野口悠紀雄著 円安が日本を滅ぼす」の執筆当時の詳説ではあるが、かう書かれてゐる。
台湾のTSMCは、最先端工程で半導体製造を行ってゐる。世界で初めて5ナノメートル(nm:10億分の1メートル)のプロセス技術による量産を開始した(この数字が小さいほど、より微細構造の半導体を作れる)。
韓国のサムスンも、5nmのプロセスで半導体を生産してをり、営業利益の約6割を半導体事業が稼ぎ出してゐる。7nm世代プロセスの工程で生産した自動運転用のチップを、耶蘇教暦2022年1月からアメリカのテスラに納入する。
5nm世代プロセスの先端工程による半導体は、今のところ世界でサムスンとTSMCしか生産できない。そして、サムスンは、3nm世代プロセスの量産において、TSMCに先んじて、耶蘇教暦2022年上半期から量産を開始すると発表した。
日本は残念ながら、蚊帳の外だ。TSMCが熊本に新設する工場で製造するのは、22~28nmプロセスといふ、「時代遅れ」の半導体だと言はれてゐる。
現在、最先端の製造技術が要求されてゐるのは「ロジック半導体」だ。これは、計算や制御を担当する半導体の事である。PCやスマートフォンなどの頭脳部分になってゐる。
アップル、NVIDIA、AMDなどのアメリカIT企業は、回路の設計を行ひ、製造を「ファウンドリ」と呼ばれる企業に委託する。
ロジック半導体の電力消費を下げ、性能を向上させる為に、回路の微細化が進められてきた。
これを表すのが、回路の最終線幅で、それが5nmにまで来てゐる。
現在のところ、TSMCとサムスンだけが、5nmのロジック半導体を量産する事ができる。そして、サムスンは、3nmプロセスによる半導体の量産を開始したと発表した。方や、TSMCも台湾南部の台南のキャンパスで3nmプロセスでの半導体の量産を開始したとの事である。
※参照
Samsung、3nmプロセスでの半導体量産開始 TSMCに先行
台湾TSMC、3nmプロセスを採用した半導体を量産開始 − 5nmチップに比べ消費電力を約35%削減可能
このやうに、TSMCとサムスンの間で熾烈な戦ひが行はれてゐる。
※参照
Samsung、3nmプロセスでの半導体製造における良品率向上の為EUVペリクル導入
今、半導体不足が世界的に深刻な問題となってゐる。但し、足りないのは、最先端のロジック半導体ではない。
不足してゐるのは、自動車積載用や、PCやルーターなどのネットワーク機器に用ゐるもので、40nmプロセス程度のものである。
これらに用ゐる半導体不足のきっかけについて、野口悠紀雄氏は、
米支(支那中共)対立の中で、アメリカが支那中共のファウンドリSMICを制裁リストに追加した事だ。この為、アメリカの自動車メーカーは同社から車載用半導体の調達が出来なくなり、その分がTSMCを始めとする台湾のファウンドリに向かった。
ところが、TSMCとしては、最先端半導体の方が利益率が高い為、車載半導体の需要に応へる事が出来ない。
それに加へ、日本の車載用半導体の大手メーカーであるルネサス エレクトロニクスの工場で火災が発生した。そして、サプライチェーンが、新型コロナ騒動によって混乱した。かうした事の結果、委託企業が実需以上の発注をするやうになり、不足に拍車をかけたのだ。
と述べてゐる。
嘗て日本の半導体は、耶蘇教暦1970年代~80年代に世界を制したと言はれる。しかし、日本が制したのはDRAMといふメモリー半導体に限っての事である。
演算用の半導体CPUは、インテルが支配した。計算回路の設計はソフトウェアである。現在のロジック半導体は、これが進歩したものだ。
付加価値が高いのは、DRAMではなくCPUである。
インテルは、技術力によってCPUの生産を独占した。そして、マイクロソフトのOSウィンドウズとの組み合わせによって、後に「ウィンテル体制」と呼ばれるやうになったものを築いて、PC産業を制覇した。日本は、この流れに対応する事が出来なかった。
- ※参考文献
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- 「野口悠紀雄著 円安が日本を滅ぼす」
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