肺胞まで達するウイルスとは ~埃と飛沫~ 皇紀2681年

 この記事を書く為に、今日、『井上栄著 感染症 増補版』を図書館で借りてきた。私自身、専門家でもなく素人なので、ウイルス感染の基本から調べて綴りたい。

 埃は、乾燥物であるのに対し、飛沫は小水滴である。両者の大きな違ひは、埃が1メートル以上の距離を空気によって運ばれるのに対し、飛沫がとぶのは1メートル以内で、すぐに床に落ちる事である。この伝播距離の違ひは、感染対策の上で重要なポイントである。

性即理

(図壱: 埃 vs 飛沫 井上栄著 感染症 増補版 廿七頁)

 では飛沫が床に落ちたあと、病原体はどうなるのか?
ウイルスは、固体上に不可逆的に吸着してしまひ、舞い上がることはない。空気中での乾燥に強いウイルスでも、舞い上がらない(ウイルスより大きい細菌は舞い上がる。時間が経っても丈夫で感染力を保持してゐるのは結核菌である)。一方、唾液・吐物・糞便が床に落ちた場合には、全てのウイルスが固体に吸着するわけでなく、乾燥すると埃としてウイルスは舞い上がる。
 飛沫の一部は、床に落ちるまでに空気中で乾燥して、小さな飛沫核になる。これは五マイクロメートル(µm)未満の「小さな埃」であり、落下しないで遠くまで舞ひ、人が吸入すれば気道の奥、肺胞まで達する。

 しかし飛沫核の中にウイルスがゐても、そのウイルスが気管支や肺胞の細胞で増殖する性質を持ってゐなければ、感染は起こらない。例へば、鼻風邪を起こすライノウイルスは鼻粘膜の細胞でのみ増殖するので、クシャミからでた飛沫核に含まれるウイルスが肺に行っても感染は起こらないのである。

 ところで埃・飛沫媒介による感染を予防するためにマスクを使ふ場合、肺胞まで到達するやうな小さな埃は通常のマスクを通過してしまふ事が問題になる。
 つまり、マスクを通過しない大きなサイズの埃に含まれるウイルス(上気道粘膜の細胞で増殖したウイルス)の伝播は遮断される。一方、五マイクロメートル(µm)未満の小さなサイズの塵埃はマスクを通過し、咽頭には吸着せずに喉頭から下気道へ入り、気管、気管支から肺胞へ行き、ウイルスがそこで増殖すれば感染が伝播する。

 まづこれがウイルスと細菌とマスクにおける基本中の基本とのことである。

※参考文献
  • 「井上栄著 感染症 ~広がり方と防ぎ方~ 増補版」
  • 井上栄著 感染症 ~広がり方と防ぎ方~ 増補版

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