ミサイルとは。 ~MD(ミサイル・ディフェンス、ミサイル防衛)~ 皇紀2680年

 自衛隊は皇軍(天皇陛下の軍)ではない。ゆゑに、その最高指揮権を有する内閣総理大臣(自衛隊法第七条参照)は、統帥権を奉還するのが必至である。
 さうなのだが、憲法論のみならず、國防論も学ぶ必要がある。以降は、さやうな意義で國防論を展開していく。

 日本本土を空襲できる敵国のミサイルには、大別して大気圏外までいったん飛び出してから、抛物線(ほうぶつせん)を描いて惰性で落下してくる「弾道ミサイル(弾道弾)」と、終始、大気圏内を動力飛翔するタイプの「巡航ミサイル」とがある。
「ミサイル」は、たゞのロケット弾や砲弾とは異なり、加速途中で方位角や迎角やスピードを自己調整できることを、現代では意味し、また、抛物運動のことは「弾道飛行」とも呼ぶ。合はせて「弾道ミサイル」とも譯せるわけである。さらに字数を節約したい時は「弾道弾」と表現することもある。
 弾道ミサイルの始祖は、第二次大戦中のドイツが製造してロンドンに落下させた「V-2号」。その直系として旧ソ連は「スカッド」をつくり、その発展型として北朝鮮の「ノドン」や支那の「東風21」もある。米露のICBM(大陸間弾道弾)、SLBM(潜水艦発射式弾道ミサイル)は、みな「V-2」号から発展したものである。
 巡航ミサイルの始祖は、第二次大戦中のドイツが製造してロンドンを空襲した「V-1」号。米国は戦後、この「V-1」号をさらに改良し、潜水艦が浮上状態で陸地に向けて発射できる核弾頭の「レギュラス」といふ巡航ミサイルにする。
 米海軍は、「ポラリス」SLBM原潜が実践配備されるまでは、この「レギュラス」を搭載したディーゼル潜水艦を日本の近海に遊弋させて、いつでも極東のソ連軍港を破壊できるやうにしてゐた。その母港は日本の軍港であった。
 ちなみに、ポラリス以降の戦略ミサイル原潜は、任務中は絶対に浮上して姿を現さないことが運用の基本となったので、米本土外の軍港には寄港もしなくなった。
その為、例へば支那の最初の核実験の前後に、日本人にポラリス原潜の存在を意識させて核の傘があると思はせる為、佐世保へ象徴的に寄港させた原潜は、国外で浮上させても構はない魚雷専用のタイプだった。

 さて、イージス艦(海上自衛隊)からスタンダードミサイル(SM-3)といふ艦対空ミサイルで、敵国の発射した弾道弾をミッド・コースの後半で迎撃し、さらに航空自衛隊の地対空ミサイル「ペトリオット(PAC-3)」で、ターミナル・フェイズの迎撃をしてやらうといふのが、所謂「MD(ミサイル・ディフェンス、ミサイル防衛)」である。
ミッド・コースとは。敵の弾道ミサイルを探知したり迎撃しようとする側の用語では、敵の弾道ミサイルの発射から燃焼カットまでは「ブースト・フェイズ」、そこから大気圏再突入までは「ミッド・コース」、再突入から着弾までは「ターミナル・フェイズ」と呼ぶ。
当初は、「TMD(戦域ミサイル防衛)」とか「BMD(弾道ミサイル防衛)」と米国において称してゐた。

 ところが、兵頭二十八氏によれば、ミッドコース迎撃は準備コストが箆棒にかゝってしまふ割には、パフォーマンス(宇宙空間での撃砕)が良くないといふ。「SM-3」も空自の「PAC-3」も、対処ができなくなる公算大だと。
 「SM-3」よりも守備範囲が狭い「THAAD」の新規調達はもってのほかで、「SM-3」も護衛艦から発射させるのではなく、地上配備型イージス基地に集約してしまふのが良いでせう(その基地を本土にあと数か所増やすとしても、イージス艦にBMD任務を負はせるよりはトータルのライフタイム・ランニングコストは抑制される)、と兵頭氏は云ふ。

 次回は、BMDが「気休め」でしかない理由、そして真剣な防衛策略について記述したい。

※参考文献
  • 「兵頭二十八著 日本人が知らない軍事学の常識」
  • 「兵頭二十八著 空母を持って自衛隊は何をするのか」
  • 「中川八洋著 尖閣防衛戦争論」
  • 兵頭二十八著 日本人が知らない軍事学の常識
  • 兵頭二十八著 空母を持って自衛隊は何をするのか
  • 中川八洋著 尖閣防衛戦争論

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