聖教要録とは ~山鹿素行~ 皇紀2679年

 『聖教要録』に先立って編集されたのは、『山鹿語類』である。これは門人達が山鹿素行の言葉を記録し、それを分類したもので、全45巻の浩瀚なものである。文章は、和文と漢文の両方が共存し、素行自身の筆になるものも含まれてゐると推測されてゐる。『聖教要録』はこの『山鹿語類』の中の巻33から43までの「聖学」部分、つまり儒教理論の要点をコンパクトにまとめたものである。序文など見るとこれも一見門人の手になるやうであるが、素行自身は自著のやうに扱ってゐるし、また赦免されて赤穂から江戸に戻った後、しば/\この書を講じてゐる。
※素行は『聖教要録』刊行によって幕閣の忌諱に触れ、45歳の時に赤穂に流されることになる。赦免されて江戸に戻ったのは、赤穂での暮らしが10年になる54歳の年の6月であった。
 諸家が言ふやうに、本書を自著と同等に位置づけて何の不都合もない。土田健次郎氏は、「素行の儒学思想を知るには、この書にしくものは無いのは確かである」と述べてゐる。素行は、門人達が危惧を持ったのにも関はらず、この書を出版した。門人達の懸念は現実のものとなったのであるが、素行がこの書にかけた思ひは殊の他強いものがあったのであらう。

 本書の一部を抜粋して載せてあるサイトがあるので紹介しておく。↓
聖教要録(小序、上、中、下)

 上記サイトに抜粋された「重要語句」以外にも、詳説のある「語句」を以下に記しておく。
聖教要録上には、「道統」、「詩文」。
聖教要録中には、「仁」、「礼」、「誠」、「忠恕」、「敬恭」、「鬼神」、「陰陽」、「五行」、「天地」。
聖教要録下には、「心」、「意情」、「志気思慮」、「人物の生」、「易に太極有り」。

 聖教要録下にある「人物の生」は、『理気交換して万物生ず』と始まる。朱子学では理は法則や秩序であって、実際に交換するのは気に限る。素行はあへて理と気の相互作用といふ表現を使ひ、朱子学のやうに理と気を截然と分けるのではなく、両者の融合を説かうとしてゐる。これは理を気の方に引きつけた解釈である。
 即ち、理は道徳的性格によるものであるから、人間的行為の局面に於いてあらはれるのであり、従って理を剔出するといふものではないのである。

※参考文献
  • 「山鹿素行著/土田健次郎訳 聖教要録・配所残筆」
  • 山鹿素行著/土田健次郎訳 聖教要録・配所残筆

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