内閣制度を明文化 ~ 大日本帝國憲法第五十五條の改正 ~

 退位特例法たる法律は、輔弼の域を越えてゐる。現行の占領典範が皇室弾圧法である事は、条文の解釈たる形式で、以前投稿した。

[皇室典範: 皇室弾圧法(占領典範)の欺瞞]

 日頃から私は、法的に無効な占領典憲の無効確認、大日本帝國憲法復元改正、正統な明治皇室典範奉還、を訴へてゐる。占領典憲の無効確認の手順については、このブログでも以前記した。そこでこの投稿では、大日本帝國憲法改正案の視点から本来の我が國のあり方、ひいては如何に帝國憲法を改正すべきか?を考察していきたい。資料に、「梓弓」山岸さんの大日本帝國憲法改正案を拝借する。

[大日本帝國憲法改正案]

 以下は、帝國憲法第五十五條の改正案である。


(改正案)第4章 内閣及枢密顧問

(改正前の原文)第4章 国務大臣及枢密顧問

(内閣制度を憲法上の制度とし、明文化した。また、内閣総理大臣を「同輩中の首席」ではなく、名実ともに内閣を代表し、天皇を内閣の責任において輔弼するものとした。)

(改正案)第55条 内閣総理大臣ハ国務各大臣ト倶ニ内閣ヲ構成ス
2 内閣総理大臣ハ内閣ヲ代表シテ天皇ヲ輔弼シ内閣ハ其ノ責ニ任ス
3 凡テ法律勅令其ノ他国務ニ関ル詔勅ハ国務大臣ノ副署ヲ要ス
4 内閣総理大臣ハ帝國議会議員ノ内ヨリ帝國議会ノ指名ヲ受ケ天皇之ヲ任命ス貴族院衆議院指名シタル者カ異ナル場合ハ貴族院ノ指名ヲ優先ス
5 内閣総理大臣衆議院ヨリ不信任決議ヲ受ケタルトキハ10日以内ニ衆議院ヲ解散セサルトキハ総辞職スルコトヲ要ス但シ不信任決議ニ貴族院不同意ナル場合ニ於テハ此ノ限ニ非ス内閣総理大臣ハ衆議院ヲ解散シ総選挙ヲ行フコトヲ得

(改正前の原文)第55条 国務各大臣ハ天皇ヲ輔弼シ其ノ責ニ任ス
2 凡テ法律勅令其ノ他国務ニ関ル詔勅ハ国務大臣ノ副署ヲ要ス

 第四章 『国務大臣及』 から 『内閣及』 としてゐる点に着目する。統帥権干犯問題については、戦後も議論されてきたのであるが、帝國憲法第五十五條には、『国務各大臣ハ天皇ヲ輔弼シ其ノ責ニ任ス』とある。帝國憲法には、首相も内閣も記載が無い事も、今までに議論されてきてをり、この点が欠陥であるとし、軍部の暴走を招いたと主張する論客も一部にゐる。しかし、昭和初期に於いては、ソ連の影響で共産主義が一世風靡し、ボリシェヴィキの主導によって創設されたコミンテルンのゾルゲ諜報団のメンバーだった尾崎秀実、ゾルゲ機関員の風見章、西園寺公一ら左翼グループ(昭和研究会)によるレーニンの敗戦革命論に則ったスパイ活動が活発化してゐた。我が大日本帝國陸軍にも、かやうなコミンテルンのスパイが青年将校のかなりの部分を洗脳してゐたであらうし、よって帝國憲法に欠陥があったといふよりは、帝國憲法が遵守されなかったからではあるまいか。

 憲法典の条文の考察に戻る。帝國憲法の起草者の一人である伊藤博文は、ビスマルクに会ひ、ベルリン大学の憲法学者ルドルフ・フォン・グナイストの講義を受けた。以下はWikiからの引用である。

『グナイストは伊藤に対して、「イギリスのやうな責任内閣制度を採用すべきではない。なぜなら、いつでも大臣の首を切れるやうな首相を作ると国王の権力が低下するからである。あくまでも行政権は国王や皇帝の権利であって、それを首相に譲ってはいけない」とアドバイスした。』

 上記で説明した「帝國憲法には、首相も内閣も記載が無い」事は、グナイストの講義も参考にされてゐたのであらう。グナイストはユダヤ人である。

 さて、そこで再度、帝國憲法第五十五條の改正案を観察する。


(改正案)第4章 内閣及枢密顧問
(改正前の原文)第4章 国務大臣及枢密顧問

(改正前の原文)第55条 国務各大臣ハ天皇ヲ輔弼シ其ノ責ニ任ス
2 内閣総理大臣ハ内閣ヲ代表シテ天皇ヲ輔弼シ内閣ハ其ノ責ニ任ス
(改正案)第55条 内閣総理大臣ハ国務各大臣ト倶ニ内閣ヲ構成ス

 帝國憲法下では、内閣総理大臣は「同輩中の首席」であり、即ち閣僚の任免・罷免権は無く、形式的なトップに過ぎないが、上の改正案では、「内閣総理大臣は内閣を代表して天皇を輔弼し内閣は其の責に任す(その責任を負ふ)」と、首相が内閣を代表し、天皇を内閣の責任に於いて輔弼する事をはっきりと明文化したのである。これにより、首相の任命及び衆議院解散、内閣総辞職の旨が項目四、五と続く。


(改正案)
4 内閣総理大臣ハ帝國議会議員ノ内ヨリ帝國議会ノ指名ヲ受ケ天皇之ヲ任命ス貴族院衆議院指名シタル者カ異ナル場合ハ貴族院ノ指名ヲ優先ス
5 内閣総理大臣衆議院ヨリ不信任決議ヲ受ケタルトキハ10日以内ニ衆議院ヲ解散セサルトキハ総辞職スルコトヲ要ス但シ不信任決議ニ貴族院不同意ナル場合ニ於テハ此ノ限ニ非ス内閣総理大臣ハ衆議院ヲ解散シ総選挙ヲ行フコトヲ得

 ここで、上院たる貴族院の優先性も記述されてゐる。四 では、貴族院、衆議院が指名した候補者が異なる場合は、貴族院の指名を優先する事、五 では、不信任決議に貴族院の同意が無い場合に於いては此の限りではない、と。これは、「多数派の暴政」や衆愚政治を抑制する為であるが、この観点については、以前まとめさせていたゞいた次第である。

[多数派の暴政や衆愚政治を抑制する。「貴族院」と「皇室典範の復元」]

 戦後左翼は、執拗に戦前戦中の反省と際し、何かと大日本帝國憲法の欠陥性を言及するが、然らば大日本帝國憲法に、『内閣制度を明文化』すべきか?と云ふ改正論議が為されるべきではなからうか?憲法典改正は、この点こそ、最も議論されなければならない、と私は信じて止まないのである。


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