ガン・タイプ(砲身式)と爆縮式とは ~ウラン235、プルトニウム239とプルトニウム240~ 皇紀2686年

 いはゆるガン・タイプは、爆縮式よりたくさんのウラン235を必要とする。しかし高濃縮ウランがふんだんに手に入り、その投射をロケットでする必要のない国ならば、入手の簡単でない中性子源も必要でなく、核武装への近道だと言へる。南アフリカ共和国はこの条件に合致してゐたので、ガン・タイプを作った。

 一方、長崎に落とされた原爆は、プルトニウムの爆縮式であったが、ウラン235も、爆縮式で起爆する事ができる。そして、この方式にはメリットが大きいので、現在の核先進国のウラン原爆は、全て爆縮式だと思って間違ひない。
 南アフリカ共和国といふ顕著な例外を除くと、今日、一定の技術を持ってゐる国が、砲身式(広島型)のウラン原爆を作らうとは、まづ思はないものである。それは、貴重な高濃縮ウランの無駄遣ひで、SSM(地対地ミサイル)の弾頭にもしにくいと知られてゐる為だ。
 爆縮式のメリットとして、あまり高濃縮のウランでなくとも、原爆になし得る事が挙げられる。また、ウラン235そのものも、より少量で済むといふ。その為には、中性子発生源(ポロニウムのやうなもの。当然、自己崩壊し続けてゐるわけで、何年もストックはできない)をトリガーとしてボールの中心かどこかに置けばよいのである。
 ウランの爆縮型を研究しておけば、その知見がそのまゝプルトニウム原爆の開発の助けにもなるだらう。
 なほ、ウラン235は、投射を考へない「建物原爆」とするならば、濃度20%でも可能だといふ。砲身式の原爆とするならば、93%濃縮が要求される。だから、爆縮式が要求する濃度は、この20%と93%の間のどこかである。

 ウラニウムを高度に濃縮すれば、工業大国でなくとも、最も構造簡単な原爆(砲身式)を作る事ができる。南アフリカ共和国は、それを実証した。ノウハウは、公地だ。しかし他のどの国でも、南アフリカ共和国の真似ができるわけではない。それは、豊富なウラン鉱山が自国内にない為に、「濃縮」といふ最初の工程で行き詰まるからである。大多数の小国は、原爆級まで濃縮したウラン235を、十キログラム単位では製造できないのだ。
 しかし、低濃縮ウランなら、少しは製造できる。それを利用して「プルトニウム生産炉」を運転すれば、ウラン235と並ぶもう一つの原爆素材であるプルトニウム239が、比較的簡単に得られるだらう。
 プルトニウム239を得ようと思ったら、まづ天然ウラン(全く濃縮がされてゐない素材)か、低濃縮ウランを手に入れ、それを炉心に装置した「プルトニウム生産炉」を運転しなければならない。
 米国の原爆装置に用ゐられてゐるプルトニウム素材は、細かく見ると、プルトニウム239が93.8%、そしてプルトニウム240が5.8%含まれてゐるさうである。
 英国のプルトニウム生産炉であるコールダーホール原子炉から取り出したものは、その値が、それ/゛\、92%と7%であったといふ。
 コールダーホ-ルに類似した日本の「東海1号炉」では、それ/゛\79.4%、17.8%であった。
 また、現今の軽水炉で3年燃やした燃料集合体から抽出精製し得るプルトニウムでは、その比率は、それ/゛\61.7%、22.0%となってしまひ、このくらいプルトニウム240の含有が多いと、もはや絶対に原爆にはならない、とされてゐる。
 プルトニウム240の割合が2~3%のプルトニウム素材を「スーパー級」、7%以下を「兵器級」、18%以上を「原子炉級」と言ってゐる。

 原爆用のプルトニウム原料を得ようとする時に、最大の障害となるのは、プルトニウム239を単離しようとする際に、どうしても不純物として混じってくる、高次同位元素のプルトニウム240である。
 プルトニウムの同位体であるプルトニウムの240は常に中性子を出してゐる為に、プルトニウムで簡単な「ガン・メソッド」の原爆を作らうとすれば、二塊がくっつく前に中性子の為に反応が過早に始まって、ごくわずかな核分裂エネルギーしか解放されぬうちに容器が壊れてしまふおそれが強いのである。
 例えるならば、打ち上げ花火が上空で開く一瞬前に容器が割れてしまって、火のついてゐない大半の黒色火薬が空にバラ撒かれておしまひ、といふ、そんなフィズル(立ち消へ、不完爆)になる。マンハッタン計画チームは、耶蘇教暦1944年にこの可能性を計算で確かめるや、とりあへずプルトニウムのガン・アセンブル方式の追及は放棄し、新たに「爆縮式」といふアイディアに、プルトニウム240障害のブレークスルーを見出す事になる。
 困り者のプルトニウム240の、有益なプルトニウム239に対する比率は、原子炉に燃料棒が挿入されてゐる期間が長くなればなる程、増す。

 ソ連、英国、仏国ともに、最初の原爆は、プルトニウム型から出発してゐた。
 プルトニウム生産炉から取り出して精製した素材にも、わずかにプルトニウム240といふ有害不純物が混じってしまふから、中性子過多による不完爆現象を回避する為に、プルトニウム原爆は、基本的に爆縮式とする。

※参考文献
  • 「兵頭二十八著 ニッポン核武装再論」
  • 兵頭二十八著 ニッポン核武装再論

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