【憲法改正発議大権は、一身専属の天皇大権】正規の輔弼機関である枢密院の諮詢

我が國に於ける憲法改正発議大権とは、一身専属の天皇大権である。國会に発議権(占領憲法九十六条)は無い。これをやれば天皇大権を侵す事になる。

「南出喜久治著 占領憲法の正體」では、以下に説明されてゐる。

~ 「南出喜久治著 占領憲法の正體」から引用ここから ~
大日本帝國憲法発布時の詔敕及び帝國憲法第七十三條第一項により、憲法改正の発議権は天皇に一身専属し、帝國議会及び内閣等の機関、ましてや、外國勢力の介在や関与を許容するものではない。
GHQは、いはゆる松本案を排除してGHQが起案した草案を強制し、これを原案として改正案が策定されたのであるから、発議大権を輔弼し得る國内機関である「枢密院」の諮詢による審議(帝國憲法第五十六條)が排除されて、その正規の輔弼機関(枢密院)の審議によらない系統の草案を原案とした点に於いても、明らかに発議大権の侵害といふよりも、発議大権の簒奪に他ならず、これによる改正審議も議決も無効である。
最後の枢密院議長であった清水澄博士が占領憲法に抗議して自決された事実は、帝國憲法第五十六條及び帝國憲法第七十三條に基づく枢密院の審議が排除されて占領憲法が成立した事の証左に他ならない。
さらに、発議大権の簒奪は、これにとどまらない。帝國議会が修正議決した事もまた、二重の意味で憲法改正発議大権の侵害となる。即ち、「議会ハ憲法改正案に対シテハ可否の意見ノミヲ発表スヘク之を修正シテ議決スルコトヲ得サルモノト為ササルヘカラス」(清水澄)とするのが当時の通説であり、議会に修正権を与へる事は第二の発議権を認める事となり、天皇に専属する憲法改正の発議権を侵害する事になるといふのがその理由である。
帝國議会に於いては、衆議院で帝國憲法改正発議案を修正可決し、その後に貴族院でも衆議院の送付案をさらに修正可決し、それを回付された衆議院では、これを憲法改正特別委員会に付託せずに直ちに本会議で起立方式で修正回付案を採択して可決したのである。
衆議院に於いて二度、貴族院に於いて一度、それぞれ修正決議した点は、発議大権の侵害となって無効である。
因みに、帝國議会には発議案に対する修正権が無いのが定説であり帝國議会に於いて修正を加へる事は「法的連続性」を欠くと衆議院本会議で明確に主張したのは、皮肉にも衆議院議員の野坂参三(共産党)だけであった(昭和二十一年六月二十八日)。
~ 「南出喜久治著 占領憲法の正體」から引用ここまで ~

つまり憲法改正発議案は、枢密院への諮詢といふ形を以て原案とするのであり、立法機関である帝國議会には発議案に対する修正権は無いのである。

また、明治典範も天皇に固有の発議権があると述べてゐる。

~ 「南出喜久治著 占領憲法の正體」から引用ここから ~
またこの事は占領典範にも同じやうな事が云へる。明治典範第六十二條には、「將來此ノ典範ノ條項ヲ改正シ又ハ增補スヘキノ必要アルニ當テハ皇族會議及樞密顧問ニ諮詢シテ之ヲ勅定スヘシ」とあるので、この敕定についても外國勢力の介在や関与を許容するものではない。いはば、皇室の自治と自立が保たれるべき皇室家法の典範は、その改正は勿論の事、ましては廃止するについては、天皇に固有の発議権があり、その事は帝國憲法の場合に勝るとも劣らない事である。それゆゑ、明治典範の廃止と占領典範の制定はいづれも無効である。
~ 「南出喜久治著 占領憲法の正體」から引用ここまで ~

[帝國憲法第七十三條]

1. 将来此ノ憲法ノ条項ヲ改正スルノ必要アルトキハ「勅命ヲ以テ」議案ヲ帝国議会ノ議ニ付スヘシ
2. 此ノ場合ニ於テ両議院ハ各々其ノ総員三分ノニ以上出席スルニ非サレハ議事ヲ開クコトヲ得ス出席議員三分ノ二以上ノ多数ヲ得ルニ非サレハ改正ノ議決ヲ為スコトヲ得ス

また、「梓弓」山岸さんの大日本帝國憲法改正案では、
「憲法改正における貴族院の権限を強化した。」とされてゐる。

(改正案)2. 此ノ場合ニ於テ両議院ハ各々其ノ総員三分ノニ以上出席スルニ非サレハ議事ヲ開クコトヲ得ス衆議院議員ノ出席議員三分ノ二以上ノ多数ヲ得且貴族院議員ノ出席議員ノ全員ノ賛成ヲ得ルニ非サレハ改正ノ議決ヲ為スコトヲ得ス

(改正前の原文)2. 此ノ場合ニ於テ両議院ハ各々其ノ総員三分ノニ以上出席スルニ非サレハ議事ヲ開クコトヲ得ス出席議員三分ノ二以上ノ多数ヲ得ルニ非サレハ改正ノ議決ヲ為スコトヲ得ス

「貴族院議員ノ出席議員ノ全員ノ賛成ヲ得ル」が追加されてゐる。これには、俺も賛同する。

さらに、「第七十五條は國家主権に関わる事項であるから、改正すべきではない。」とされてゐる。これは当然の事である。

[帝國憲法第七十五條] 憲法及皇室典範ハ摂政ヲ置クノ間之ヲ変更スルコトヲ得ス

[帝國憲法第五十六條]

樞密顧問ハ樞密院官制ノ定ムル所ニ依リ天皇ノ諮詢ニ應ヘ重要ノ國務ヲ審議ス

[明治典範第六十二條]

將來此ノ典範ノ條項ヲ改正シ又ハ增補スヘキノ必要アルニ當テハ皇族會議及樞密顧問ニ諮詢シテ之ヲ勅定スヘシ

明治典範はこちら

※参考文献
  • 「南出喜久治著 占領憲法の正體」

Leave a comment

Your email address will not be published.


*