国の防衛費のコストパフォーマンス ~日本と英国を対比する~ 皇紀2684年

 私自身、正直に言って、防衛庁と防衛省の違ひは、せい/゛\格上げされたといふ組織的な外観しか調べた事がなく、国防の観点では、大した変はりはないといふ認識でゐた為、今記事の参考書籍以外に、「太田述正著 実名告発防衛省」と云ふ書籍も購入したが、こちらはまだ読み始めてゐない。
 よって今回は、防衛庁時代に上梓された書物であるが、現在においても参考にできる内容と思ふので、こゝに纏めておきたい。

 日本は、実質ベースで(上梓された当時。データは平成11(1999)年~平成13年(2001)辺りのもの)英国の1.42倍もの防衛費を支出してゐるが、この差を日本の国情からくる基地対策経費の多さや、英国が負担してゐない米軍駐留経費の存在だけによって説明する事は出来ない。日本は現在(上梓された当時)、紛れもなく英国よりも遥かに多い防衛費を支出してゐるのである。
 しかし、それ/゛\の国の防衛費のコストパフォーマンスはどうか。
 まづ気がつくのは、日本のR&D(装備研究開発)面での手抜きぶりである。英国は、人件費補正ベースでも防衛費の9.7%もR&Dに投じてゐるのに対し、日本は2.8%に過ぎず、英国の3割弱の努力しかしてゐない。この事も、日本の防衛力が「見せ金」である(=見えない所は徹底的に手抜きする)事の端的な証左である。
 また、防衛関係要員数は日本が28万人弱であるのに対し、31万人強と英国の方が上回ってゐる点も目につく。これに予備兵力を加味して考へれば、英国の方が遥かに多勢の要員を擁してゐる。つまり、防衛費こそ少ないが、マンパワー面では英国の方が充実してゐる事になる。

 では、装備面ではどうか。
 まづ、陸上装備だが、対戦車機動攻撃力で見ると、戦車の数こそ日本が上回ってゐるが、攻撃ヘリコプターは英国の3分の1しか無い。仮に戦車と攻撃ヘリコプターの戦力比が価格比とイコールであると云ふいさゝか乱暴な仮定を置けば、日本の対戦車機動攻撃力は英国の4分の3にしかならない。

 他方、装甲機動防御力を見てみると、装甲偵察車、装甲歩兵戦闘車、装甲車の合計が日本は940両であるのに対し、英国は2407両と3倍も保有してゐる。
 結局、日本の陸上兵力は、攻撃力はそこ/\あるが、兵員の損耗を防止する努力をハナから怠ってゐる事になる。
上梓された当時の太田述正氏は、

「見せ金」たる自衛隊の面目躍如といふ所か。

と言ってゐる。

 次に海上装備である。一目見て分かる事は、日本が、空母や揚陸強襲艦を潜水艦等の攻撃から守る事を主眼とする駆逐艦や、警戒監視ないし警察行動を担ふフルゲート艦の隻数だけはやたら多いが、肝心の空母や揚陸強襲艦といった攻撃用の艦艇を全く持ってゐない事である。

※(令和6年)現在は、「いずも」や「かゞ」等のヘリコプター搭載護衛艦は配備されてをり、海上自衛隊は、「いずも型」護衛艦の「いずも」と「かゞ」の2隻を事実上の空母に改修する計画を進めてゐる。
 令和3(2021)年10月3日、F35B戦闘機が、第1段階の改修が終はった「いずも」に発着艦する試験が行はれた。

 (上梓された当時)しかも、「航空」の中の対潜ヘリコプターの所を見ると、対潜ヘリコプターの数も英国より少ない。対潜ヘリコプターの大部分は艦艇(駆逐艦やフリゲート艦艇)に搭載されて運用されるが、対潜ヘリコプターの数が少ないといふ事は、駆逐艦とフリゲート艦の隻数は多くても、対潜水艦作戦能力ないし哨戒能力が英国よりも劣ってゐるといふ事を物語ってゐる。
 当時の太田述正氏は、

つまるところ、船の数だけは揃へてゐるが、蜃気楼のやうなもので、実態は殆ど何も無いと言っても過言では無い。

と述べてゐる。

※参考文献
  • 「太田述正著 防衛庁再生宣言」
  • 太田述正著 防衛庁再生宣言

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