「占領憲法改正、自主憲法制定」は手順を踏めるか? / 占領典憲以外の無効確認措置

引き続き、復元手順を追っていくが、その前に、他種の「占領憲法改正、自主憲法制定」の手順はどうなのか?
俺は、この件についてまともな手続法を聞いた事がない。
戦後体制とは、「占領憲法は、大日本帝國憲法第七十三條を正常に経た帝國憲法の改正憲法」であるといふ嘘を強引に突通す事で、六十年以上もの間騙し騙しでやってきた体制と云へる。そしてこの体制を守るのが五十五年体制であるから、占領憲法改正を主張するのは当然であるが、いざ憲法会議となると、

戦後保守政党のA議員「日本国憲法96条には、総議員の三分の二以上の賛成で改正とあるが、この手続きで改正したら、帝國憲法第七十三條を正常に経た帝國憲法の改正憲法ではなくなるのでは?」

戦後保守政党のB議員「要するに改正後の日本国憲法は、帝國憲法を破棄した事になりますな」

戦後保守政党のC議員「それは大変な事だ、他に手続はないものか?」

戦後保守政党のD議員「私は無効論者だ。1947年の帝國憲法改正は無効だと確認し、帝國憲法第七十三條の手続で改正すればなんの問題もなく筋も通ってゐる」

戦後保守政党のABC議員「無効だと!帝國憲法復元だと?何をいふか!けしからん。」

とまあこんなところではないかと思ふ。

自主憲法制定も帝國憲法破棄なので、如何なる手続を経るのか?これを云ってる張本人ですら、検討もついてないのではなからうか。
日本国憲法を無効宣言せずして破棄するとは、(法的ではない)政府見解である「大日本帝國憲法第七十三條の手続きを正常に経た帝國憲法の改正憲法である日本国憲法」を破棄するわけだから、如何にして破棄するのか?「日本国憲法を破棄します」と宣言して国会過半数で破棄決議をするのか?この時、「大日本帝國憲法第七十三條の手続きを正常に経た帝國憲法の改正憲法」を破棄するのであるから、大日本帝國憲法をも破棄してしまふ事に、なりはしないか?

戦後保守政党からすれば、自ら大日本帝國憲法を破棄してしまった事が政府見解となるのだけは、是が非でも避けたい筈だ。帝國憲法の破棄が政府見解となれば、悪しくも当然戦後体制が壊れるからである。だから詭弁を弄しつつ立ち往生したあげくに、
「し、暫くは國防は米軍に任せよう」
となってしまふ。

さて、ここからは「南出喜久治著 占領憲法の正體」を引用、或いは参考に、「その他の無効確認措置」を追っていく。

占領典憲以外にも、無効確認措置をする必要があるものとしては、昭和二十三年六月十九日に衆参両議院でなされた教育勅語、軍人勅諭、戊申詔書の排除・失効を決議した「教育勅語などの排除・失効決議」(昭和二十三年決議)がある。
この昭和二十三年決議は、本質的に無効である。なぜならば、教育勅語などは広義の詔勅であるから、これを廃止することができるのは、詔勅によってなされることが資格要件である。これは、追認とか取消の場合と同様、勅語といふ形式のものを失効させるには、同じ勅語といふ形式によることでなければ、失効させる「適格」がないといふことである。
ところで、昭和二十三年決議自体の決議の効力の如何を問はず、明確に排除・失効の対象となったのは、教育勅語などの極少数のものである。勿論、記紀に顕された全ての御神勅、御詔勅と、その後に連綿と渙発されてきた詔は排除の対象となってゐない。つまり、これら大部分の詔が今なほ効力を有してゐることになる。ただし、占領憲法の前文には「われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。」とある、占領憲法98条一項には、「この憲法は、國の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び國務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」と規定してゐるので、個別に詔勅等を特定して排除・失効の決議をしなくても、一律に排除されると解釈することも可能であったが、当時の國会は、この規定を政治的宣言と理解して、当然には無効とはならず、個別に排除・失効の決議をすることによって初めて無効化しうるとの解釈に立った。実際にも、法律、命令については、「日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律」(昭和二十ニ年法律第七十ニ号)及び「日本国憲法施行の際現に効力を有する勅令の規定の効力等に関する政令」(昭和二十ニ年政令第十四号)を制定して時際法的に処理したことから、詔勅についても、個別の形式的な排除決議(創設的決議)をして初めて排除・失効できるとして、昭和二十三年決議を行ったのであるから、この決議で対象とされてゐない大部分の詔勅は排除・失効の対象とはなってゐないといふことである。

※参考文献
  • 「南出喜久治著 占領憲法の正體」

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